皮膚良性腫瘍
色素性母斑(ホクロ)
母斑細胞というメラニンを作る細胞からなる良性腫瘍のことです。
色素性母斑は以下のように黒子、通常型、巨大型にわけられていますが、このうち、通常型、巨大型を黒アザと呼んでいます。黒子はいわゆる「ホクロ」で、盛り上がるものと、扁平なものがあります。3~4歳頃から発生し、次第に数が増えます。通常型は普通によくみられる「黒アザ」で、多くは出生時から存在します。表面に硬い毛(硬毛)が生えているものがあり、このようなものは有毛性色素性母斑と呼ばれています。巨大型は、体や手足など、広範囲にみられ、生まれた時から存在します。悪性化する可能性が他の色素性母斑よりあります。
※一見、ホクロのように見えても、基底細胞癌や日光角化症、または悪性黒色腫といった皮膚癌のことがありますので、自己判断せずに、皮膚科専門医を受診し、本当にホクロかどうか診断を受けて下さい。
治療は手術によって切除するしかありません。手術には色々な方法がありますが、円筒状の刃で刳り貫くパンチ切除と通常のメスで切除する方法、炭酸ガスレーザーで焼き切る方法があります。
脂漏性角化症(老人性疣贅)
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)」とはあまり聞き慣れない病名ですが、非常に受診頻度の高い疾患です。脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)の発生の原因は、紫外線の影響や皮膚の老化です。高齢者の顔などに多く見られる少し盛り上がった茶色~黒色の表面が少しざらついたできものです。色調は健康な皮膚に近い色調のものから黒色調のもの、大きさは数mmから2~3cmくらい、形状はわずかに盛り上がるものから突出したしこりになるものまで様々です。シミと混じって存在することが多く、最初シミだったものが盛り上がって脂漏性角化症となることもあります。
治療法としては、手術、凍結療法、レーザー治療、電気外科的治療などがあります。
粉瘤(アテローム)
粉瘤は、皮膚の内側に袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)や皮膚の脂(皮脂)が、袋の中にたまってしまってできた腫瘍(嚢腫)の総称です。たまった角質や皮脂は袋の外には排出されないので、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。身体のどこにでもできますが、特に顔、首、背中、耳のうしろなどにできやすい傾向があります。
アテロームは基本的に良性の腫瘍ですが、非常に経過が長く、サイズの大きなものや炎症を繰り返したものは、ごくまれに悪性化(がん化)したという報告があります。具体的には、中高年齢層の男性の頭部、顔面、臀部の大きなアテロームでは注意が必要で、「急速に大きくなる」「表面の皮膚に傷ができる」などの特徴があるようです。
アテロームに何らかの原因で炎症が生じると、表面が赤くなり、痛みを伴うようになります。これを炎症性アテロームと呼びます。炎症がさらに進むと、表面の赤みは拡大し、痛みも強くなり、嚢腫の内容物がドロドロになって膿みとなり、ブヨブヨしてきます。腫れが限界に達すると、嚢腫は破裂して非常に臭いドロドロの膿性内容物が排出されることがあります。
炎症が起きる原因については、外的刺激によって袋状構造物が壊れてしまい、皮膚の内部に角質や皮脂などが排出され、これに対して異物反応が起きるためだといわれています。これに細菌感染が二次的に加わると、さらに炎症症状は増悪します。強い痛みや腫れがあるときや表面がブヨブヨしている場合は、抗生物質の効果も限定的で、早急に表面を切開して膿みをだしたほうがよいとされてます。
炎症が治まっている場合、治療は外科的に切除します。
脂肪腫
脂肪腫とは皮膚の内側に脂肪細胞が増殖してできた本当の脂肪の塊で、粉瘤とは全く異なるものです。脂肪腫も身体のどこにでもできます。基本的に痛みなどの自覚症状はありませんが、血管成分を含む血管脂肪種はつまむと痛いことがあります。治療は外科的に切除します。
その他にも、非常に多くの良性腫瘍があります。
皮膚のできものは皮膚科専門医に相談しましょう。
皮膚悪性腫瘍
基底細胞癌
皮膚の上皮(表皮や毛包上皮)から発生する皮膚癌の一種です。皮膚癌の中では最も頻度が高く、かつ、最も悪性度が低い癌と言われています。通常、中年以降の顔面の正中部(外鼻部、下眼瞼部、頬部、上口唇部)に多く発生します。日光暴露、外傷(瘢痕)、放射線、砒素が誘発因子と考えられます。臨床的には、不規則に黒色調を呈する結節状の腫瘤で、ゆっくりと成長しながらしばしば表面がくずれ潰瘍化してきます。放置すると潰瘍は拡大し容易に出血するようになります。転移は稀ですが、時に局所での浸潤が強い「破壊型」と呼ばれるものがあり、また、顔面発生が多いことから注意が必要です。治療は、外科的に切除します。
日光角化症
日光角化症は慢性的な日光曝露により,高齢者に好発する皮膚有棘細胞癌(SCC)の早期段階の病変です。とくに、紫外線のダメージが長年蓄積した、60歳以上の方で多く認められます。紫外線の影響を直接受ける顔への発生がもっとも多く、手の甲や頭部などにも発症します。表面にカサカサとした角質やかさぶたなどをともなう、紅くまだら状のシミとして見られることが多いため自覚されることが少なく、医療機関への受診も遅れがちになります。
ボーエン病
ボーエン病は、有棘細胞癌と同様に表皮の有棘層の細胞が癌化しますが、その増殖は表皮の中だけに留まり(表皮内癌と呼ばれています)、真皮に及んでいない状態です。この状態であれば通常転移することはありません。はっきりした原因は不明ですが、紫外線やヒトパピローマウイルスが関与するとされています。多発するボーエン病の場合は砒素摂取が関連しているといわれています。中年以降に発症します。表面が赤くてざらざらした状態で形は円形やいびつな形をしています。見た目が湿疹に似ていることがありますが、湿疹の薬を塗ってもよくならずに少しずつ広がっていきます。放っておくと癌細胞が真皮に侵入して有棘細胞癌と同じ状態になります。治療は外科的切除になります。
有棘細胞癌
表皮の有棘層の細胞が癌化する皮膚癌です。基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚癌です。
はっきりした原因は不明ですが、紫外線、慢性刺激、慢性炎症、ウイルス、放射線などが関与していることがわかっています。特に紫外線の刺激により生じる日光角化症は有棘細胞癌の前駆症として注意すべき病変です。
原則として手術により切除します。
悪性黒色腫
悪性黒色腫はメラニン色素を作り出すメラノサイトが癌化して発生する皮膚癌です。人種差があり、白人で発生が最も多く、日本人は10万人あたり1~2人とされています。はっきりとした原因は不明です。外的刺激、紫外線などが誘因となることがあります。
多くは黒色調の色素斑ないし腫瘤です。ときにほくろとの区別が難しいことがあります。一般的に左右非対称の不規則な形、病変の境界が不明瞭・不均一、色調に濃淡がある、大きさがやや大きい、表面が隆起しているなどの所見があることが多く、これらの所見を総合的に加味して診断します。まれに無色素性黒色腫とよばれる赤色調の病変があり、診断が非常に難しい場合があります。見た目の所見、顕微鏡の所見、予後から4型に分類されます。
悪性黒子型
高齢者の顔面に多く、10年以上かけて水平方向に徐々に大きくなり、病変内に腫瘤や潰瘍が生じます。慢性の紫外線照射が関係するといわれています。
表在拡大型
あらゆる年齢層の体幹、下腿に生じます。紫外線照射が関係するといわれており、白人では最も多い病型です。
結節型
結節、腫瘤のみで色素斑が生じない病変です。腫瘍の厚さが予後に関係するため、この病型は一般に予後がよくありません。
末端黒子型
一般に青年から壮年期以降の足底や手足の爪に生じます。最初は不整形の黒色斑で始まり、数ヵ月から数年を経て色素斑内に結節や腫瘤、潰瘍を生じます。外的刺激が誘因になることがあります。日本人では最も多い病型です。
これら4病型の他に眼瞼、鼻腔、口唇、口腔、外陰部などの粘膜に生じることもあります。外的刺激が誘因となると考えられています。皮膚に生じる悪性黒色腫よりも治療が難しい場所で、血管やリンパ管などが豊富であるため、一般に予後がよくありません。
病変の厚さ、潰瘍の有無、所属リンパ節・他の臓器への転移の有無など病気の進行により治療が異なります。
臓器転移を生じていない例では手術による切除、所属リンパ節の生検ないし郭清、および術後補助化学療法が行われます。
病変は境界より0.5~2cm程度離して切除します。所属リンパ節の転移が明らかでない場合は、リンパ節生検を行い転移が判明したらリンパ節郭清を行います。
所属リンパ節転移が明らかな場合は同様にリンパ節郭清を行います。病期Ⅲ以上では術後に補助療法を行います。
リンパ節転移が広範囲に及んだり、臓器に転移がある場合は、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬などの化学療法を主体とし、外科治療、放射線治療を加えた集学的治療が行われます。
その他にも、多くの悪性腫瘍があります。
皮膚科専門医に相談しましょう。
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